経絡治療とは

経絡治療とは(患者様向け)

経絡治療は、中国の古典鍼灸術を日本の治療家が長い時間をかけて繊細な日本人向けに研究・改良を重ねて編み出されたものです。
その特徴のひとつが、痛くない鍼と熱くないお灸。
鍼が痛くなくて灸も熱くないだなんて、俄かには信じられない方もいらっしゃるかもしれませんが、これには経絡治療の治療目標が関係しているのです。
まずは経絡治療ついて、4つの点から少し詳しく説明いたします。

1.経絡治療の目的は生命力の強化

東洋医学では、精神や肉体の正常な活動には『気』の滞りない循環が必要であるとされています。
『気』の流れる道を経絡といい、経絡の要所に経穴(ツボ)があります。
『気』は生命力そのものであり、これらが何らかの原因によって滞ったり消耗してしまったりすることで、様々な症状が現れてきます。 これがいわゆる病気の状態です。
このとき我々の身体は、正常な状態に回復しようと必死で戦おうとします。しかし時には戦うだけの力が体に備わっていないこともあります。これではなかなか症状が改善しなかったり、新たな症状が現れたりしてしまいますね。
そこで経絡治療では全身を巡る『気』のバランスを調整することによって生命力を強化ようとするのです。
その結果、自らの生命力によって、病に罹りにくくなったり打ち克ったり出来るようになっていくのです。
「病気を治すのは患者自身の生命力であり、鍼灸師はその手助けをする」と、いうのが経絡治療の考え方です。
東洋はり医学会 初代会長の福島弘道は著書『経絡治療学原論』の中で、以下のように述べています。

経絡治療とは『病体を気血の変動として統一的に観察し、総ての病変を経絡の虚実となし、その主たる変動経絡を主証として把握し、経穴をこれが診断と治療の場として鍼灸を以って補瀉調整し生命力の強化を図る随証療法』である

2.皮膚や脉の変化を診る

経絡治療では、望・聞・問・切からなる四診法によって、病体(患者様の状態)を把握します。
望診では姿形や皮膚の色などを見ることで、聞診では話す声の調子や発するにおいなどを聞いたり嗅いだりすることで、問診では生活習慣や症状に関することなどを質問し答えていただくことで、切診では症状を呈する部位や関係する経絡上の皮膚を触ったり手首の脉を診たりすることで情報を収集します。
そして四診法によって得た情報に基づき、鍼を用いて手足の経穴(ツボ)に対する操作を行います。
この操作が適切に行われたかは、手首の脉や腹部その他経絡上の皮膚を診ることで判断され、何度か行われる操作の度に確認作業を繰り返します。
東洋はり医学会方式の経絡治療は、『脉診流』の名を冠するほど脉診を重要視しています。

3.やわらかい刺激

前述の通り経絡治療の目的は生命力の強化です。
その際の治療目標である『気』は、身体の表面や浅い部分を流れているので、鍼の操作も身体の表面や浅い部分で行われます。

ここで何より重要なのは、『気』の調整に必要な刺激の量がごく弱いもので十分だということ。

だから痛くない鍼と熱くないお灸で事足りるのです。
経絡治療で主に使用する鍼は銀やステンレス製のごく細いもので、その刺激も経絡治療以外の方法に慣れた方なら不安になってしまうかもしれないほど微弱です。多くの場合、体内に深く刺入することはありません。
刺さらない鍼を用いて、皮膚に先端を接触させたり撫でたりといった操作を行うこともあります。
管を用いて体内に鍼を弾入したり、体内へ深く刺入した鍼に抜き差しや通電といった操作を加えたりする方法に比べれば、身体に与えられる物理的な刺激の量は格段に少なくなると言えます。

4.幅広い適応

鍼灸治療といえば腰痛や肩こりなど運動器の症状に対する治療手段として認識されている方が多いと思いますが、実際はもっと適応範囲の広いものです。
もちろん反射を利用した筋緊張緩和や、強い刺激による痛みのマスキングのような方法では適応となる症状も限られてきますが、『気』を治療目標とし、生命力の強化を目指す経絡治療であれば、運動器の症状に限らず内科・耳鼻科・婦人科・神経内科的な症状に対してもその効果を発揮することが出来ます。

東洋はり医学会会員の治療院では、肩こりを主訴に来院された方が経絡治療を受けるうちに、同時に抱えていた便秘や抑鬱傾向などの症状まで改善されていく事も珍しくありません。

 

東洋はり医学会の特徴(鍼灸師・学生向け)

鍼治療には数多くのスタイルがあり、経絡治療でさえもいくつかの手法があるため、どれが良いのか、どこが違うのかなど、迷う方も多いと存じます。 そこで、当会の大きな特徴である4つの事柄を紹介します。

1.脈を診る(脈診、正式には脉診)

CA340782当会は「脈診」(手首の脈などの流れを感じる)を重視しており、症状や身体の所見、問診等から得られた事項に脉診を加えた複合的な判断により、最適な東洋医学的診断・施術ができると考えています。

2.片方刺しによる相剋調整

片方刺しによる相剋調整とは、相剋する経が共に虚する患者を治療する為、臨床実践の中から生まれた治療方式です。治療する経を左右に振り分け、先に操作する方を「本証」、後に操作する方を「副証」と言います。一般的に、「相剋する経が共に虚すことは無い」と考えられていますが、ライフスタイルや疾病構造が多様化する昨今、 難経69難の治療法則を重ね用いた重虚極補の治療法である相剋調整が、臨床において威力を発揮しています。

3.多彩な刺鍼法や補助療法

病体はただ単純に虚や実を表しているわけではありません。東洋はり医学会では、虚実の程度、邪の状態にあわせた刺鍼法を用いて、それらに対応しています。また、救急法・補助療法としての子午・奇経・刺絡治療などの研究も進めています。

3.小里方式

小里方式とは、当会が重視する「脈診」のスキルを正しく伝えるために考案された独自の実技研修方式です。 検者(刺鍼を観察して意見や指導)、模擬患者(手技の感想を言う)、 術者(刺鍼する、コメントを聞く)、を役割を変えて繰り返します。 繊細な感覚を確実に伝えるため、1グループ(3~5名)に指導者1名がつきます。